愛しい手紙

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「僕が生まれたのは丁度30年前です。 あなたたちもきっと覚えているでしょう。 少し大きい赤ちゃんだったと聞いています。 その当時の記憶は全然ありませんが健康にも問題もなくすくすく育ったと聞いています。 僕が幸せだったのはその記憶のない時代でしょう。 記憶なんてないほうがよかった。 そうであれば幸せになれたのに。 三歳ぐらいから突発的に記憶が残っています。 踏切の風景を覚えていますか。 突然、家に誰もいなくなり不安になった僕は踏切を越えて母のいるピアノ教室に向かいました。 その踏切今でも覚えています。 丁度その時期その踏切で子供がひかれた事件があったそうです。 僕も馬鹿だったらその踏切を越えてひかれていたのに僕は電車を待って踏切のバーが上がるのを待っていました。 僕はその頃から怖がりでした。 多分電車にひかれる痛みというのを想像で感じとることができたんだと思います。 ピアノ教室はそこからすぐ先でした。 ピアノ教室の前に来ると僕は震えました。 なぜ、こんな所にいるんだろう。 母は怒ってしまうのではないか。 色々後悔が一杯出てきて、すぐに帰ろうとしました。 でも、母はすぐに気づいてくれました。」
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