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毎日お気に入りの鏡に姿を写して微笑むのが日課の女の子、ゆりあ。
古びた骨董品の鏡は、縁が薔薇で装飾されていて綺麗だ。それを眺めているだけで、自然と顔に笑みが浮かぶ。
ゆりあは今日もいつものように自室で鏡に向き合い、肩までの長さの髪に櫛を通していた。これから出かける用事があるので、念入りに。
茶色の緩くウェーブがかかった髪はちょっと絡みやすい。でも、それを少しも苦だと思う事はなかった。髪をとかしている間、それだけお気に入りの鏡を見つめて微笑んでいられるから。
鏡を見て、小さな唇からふふっ。と声をもらす。次にその唇は、ぽかんと真ん丸に開いた。
「……え?」
目の前のお気に入りの鏡には、茶色の緩いウェーブも、真ん丸で赤い瞳も写っていない。
鏡には見知らぬ男の顔がちょうど、ゆりあの視線の高さにあった。男はじっとゆりあを見ている。
ゆりあの笑顔を、揺れる青い瞳で見つめていた。
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