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翔の目から落ちる光の粒が何なのか、ゆりあにはわからなかった。でもとても綺麗で、思わずそれをすくい取ろうと手を伸ばしていた。
しかし、コンッ。と固いガラスの音が指を弾く。その間にも音も無くこぼれていく粒を見ていると、なんだか胸がぎゅっとなった。
ゆりあは吸い寄せられるように、伸ばした手をそのまま鏡にくっつける。すると、鏡の中の翔も同じように手を伸ばしていた。
「ねぇ、それは……なに?とても綺麗ね……」
「これは……涙。綺麗、かな……?僕は、そう思えない」
ツッと視線をそらした翔は、片手でナミダをぬぐう。
……ナミダなんて知らなかった。あんなに綺麗なものなんだ。……触れたらどうなるかしら?
ゆりあの好奇心がわくわくと膨れ上がって、真っ赤な瞳を輝かせた。
ゆりあの笑顔を見た翔は、おずおずと片手を差し出し言った。
「……こっちに、来る?」
翔の申し出に、ゆりあはすぐさまうなずいて、伸ばされた手にそっと自分の手を重ねた。
彼に、彼のナミダに触れたら、私の"欠けてる物"がわかる気がする……!
期待に胸を高鳴らせたゆりあは、満面の笑みを浮かべ翔の手を握った。
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