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きゅ、と握られていた手がスッと軽くなる。手を離されたとわかると、少し心細く感じた。
辺りを見渡すと、どうやら部屋の中のようだ。間取りが自室に似ている気がするけど、薄暗いのと家具らしい物が無さすぎてとても広く感じる。
ぶるっと鳥肌が立つ。なんだかヒヤリと冷たくて寒い。そんな雰囲気を少しでも変えようと、ゆりあは笑って顔をあげた。
「ここはどこ?」
「僕の部屋。鏡はこれ」
翔がスッと指をさしたのは、ゆりあの後ろ。鏡からはゆりあの部屋が見えた。
試しに鏡に触れてみると細い指先は、とん、と固いガラスにぶつかって冷たい温度が伝わってきた。鏡の向こう側に今までいた部屋が写っていて、変な感じがする。
ゆりあは鏡から手を離し、きゅっと握って翔へ振り返った。
「ここは、とても寒いわね」
「……うん。君の部屋はとても暖かいんだろうね」
ゆりあの背後の鏡をまぶそうに見つめる翔の目は、やっぱりしゅんとしていて今にもあのナミダがこぼれそうだった。
ナミダってなんだろう?
どうしてこぼれるの?
どうして、あんなに綺麗なのかしら?
ゆりあは翔から目を離せなくなっていた。
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