鏡に写る表裏

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翔の手が彼の心臓の辺りの服を掴む。苦しそうな顔で、青い瞳を揺らして。 「僕には、どうして君が笑っているのかわからない。その暖かな笑顔が、何なのかわからないんだ。だから、苦しい……悲しい……」 翔の言葉が、じんわりと胸に染み込んでくる。きっと彼は、私に足りないものを持ってる。そう思った。 ゆりあは、翔と同じように胸の辺りに手を添えてぎゅっと握って、彼を見つめる。 「私もわからないの。どうしてあなたがそんな顔をしているのか。どうしてあの時ママが……あなたと同じ顔をしたのか。 ナミダって、なぁに?私、笑顔しか知らない。楽しい事しかわからないの。あなたがそんな顔をしている事が、わからないの……知りたいわ」 今まで思った事も、口に出した事も無い感情。知りたくて仕方なくなっていた。 言葉にしてみたら、悔しくなってきて……顔が熱い。喉も苦しくなってきて、笑顔が崩れていく。 目をそらさず翔を見つめるゆりあの頬に、とても冷たい手のひらが触れた。熱くなった頬をそっと包んで心地いい。 「僕は……悲しいんだよ」 ゆりあの心に無かった単語が、翔のまっすぐな青い瞳から伝わってきた。
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