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「アリエルを殺してしまうこと、すなわちこの世界の因果が消える、
同時に残った人間も消える可能性があるわ、
ガーディナルは所詮この世界を構築するきっかけを作ったにすぎない、
彼も白狼の仲間にあっさり殺される、それほど期待できるとも思えない、
この大クラフトのやっかいなところは、しごく個人を優先しているだけ
であること、個人の望み、個人の欲望、個人の願い、その中心である
アリエルだけが、この世界を開放することができる、そして、
アリエルを説得できるのは多分シキだけ、アリエルにとってシキは…」
そういいかけてルナははっとして言葉を止める。
シャンドラはうんざり、という顔で首をひねり、納得の意を表した。
「それで、あたしは何をすればいい、そのままいけば、あたしも白狼に
殺されて終わりだろう、状況を知っていても、今のあたしが白狼に勝利できる
とは限らないからな」
ルナが静かに頷く。
「そのままいけばそうよ、けれどそうはさせない、貴方にアグリアをつけるわ、
正直、事例がなくて自身がないけれど、魂は世界が崩壊に向かっても切り離されない、
アグリアがその身体に同居することで、貴方の能力がどれほど戻るかは…」
そう言い掛けるルナにアグリアがつっこみを入れる。
「おいおい、私にシャンドラに宿れっていうのか?無理だろ、ルナじゃないんだ、
一つの身体に二つの魂は同居できない」
ルナがそれを聞いて、左手をアグリアにすっとあげる。
「ただの人間なら、ね」
そういってルナがシャンドラを流し見る。
それは軽蔑と偏見が同時に混じった、実に反抗的な目つきだ。
「アグリア君、心配しなくて結構だ、あたしは
人間ではない、ああ、この身体は人間だがね、借り物なんだよこれは」
それを聞いてアグリアが驚きの表情をシャンドラに向ける。
「あんた一体、なんだというんだよ」
シャンドラがふふんと、にやついてアグリアを見る。
「クレアを呼んできてくれ、良い機会だ、ルナ、君が言えば彼女も
信じるだろう」
よくわからない、という表情をしながらアグリアが仮眠中のクレアを呼びにいく。
しばらくして、ルナとシャンドラが紅茶の二杯目を飲んでいる時にアグリアがクレアを
呼んできた。
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