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「別に情けをかけたわけではないよクレア、あたしは君と白狼の娘の魂を喰らったつもり
だったのだがね、どうにもこの娘、喰らいきれなかったのだよ、さすがは君とやつの
娘といったところか、そして彼女の力は年々増しつつある、あたしの方が追い出されそう
なくらいにね」
クレアが信じられない、というようにシャンドラを見る。
「今になって何故そんな話を?ハクは、ハクがこれまでどれほど苦しんだことか…!」
それを聞いてシャンドラが笑みを消す。
「情けをかけたわけではないと言ったはずだよクレア、あたしはこれからもクレア、
君を当てにすることにしたからこのことを話たのだよ、あたしには代わりの肉体が
必要なのさ、君にはまた働いてもらわないといけないのでね、もちろん、人質はこの
マリアの身体だ、あたしが追い出されそうといっても、この身体を衰弱させることは
できるのだよクレア、マリアがあたしを追い出しても、その時マリアも死ぬくらいにはね」
クレアがぐっとこらえているのはそこにいる誰もがわかった。
けれどそれ以上に、シャンドラ自身の必死の異常性に空間が歪んでいるようだった。
「それで、シャンドラ、あんたは何者なのさ?」
アグリアがその空気を打ち破るようにすっと言葉を流す。
「化け物さ、君たちが生まれる昔からいたね、すべてのはじまり、ウロボロスの樹より
生まれた超越者と呼ばれた生き物、それがあたしたちだ」
アグリアがそれを聞いて半信半疑な顔をしたが、すぐに納得した。
「ルナを見ているからね、それにエンピレオにもウロボロスの樹に関する知識は
あった、まんざら伝説上の生き物だと言われてもまだぴんとこないけれど、
それならたしかにひとつの肉体に複数の魂を持ち込めるわけか」
ルナがアグリアの言葉を補足する。
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