第七幕「この胸の苦しい想いは」

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「ぴんとこなくても無理はないわ、彼女は確かに特異な存在ではあるけれど、  今はただの人間にすぎない、なにがどうなって、そうなってしまったのかは  しらないけれど、本来の超越者は半エーテル体で朽ちることもない存在、それが…」 そうルナが言いかけた時、シャンドラが言葉を制する。 「五月蝿いよ、それ以上は聞きたくないな、おしゃべりも長すぎた、クレアには  マリアの存在を伝えることもできたことだし、この世界を打破するまとめの  話といこうじゃないか」 クレアが疑問の顔でシャンドラを見る。 「クレアには話してあるが、これは再度確認だ、ルナ、君の意思一つで  この世界は崩壊させることができるんだな?」 ルナが静かに頷き、クレアがそれを見て得心する。 「では、このままこの世界が尽きるのを待てばどうなる?  アリエルが飽きて開放するか、もしくは向こうの彼女が死ぬか、  それがどれくらい先かわからんが、そうなればどうなる?」 ルナが紅茶をすすりながらゆっくりと答える。 「このまま世界が尽きれば全員消えるわ、この世界と共に、  アリエルがこの世界に飽きる可能性はないこともないけれど、  可能性としては相当に低い、なぜなら彼女の記憶は彼女自身が  都合の良い様に縛っているからよ、そして、彼女が死んでも  もちろんこの世界が消える、そしてここにいる全員が消える」 ふうと、シャンドラがため息をつく。それは予想通りだ、と いわないばかりのため息だった。 シャンドラはこの世界に関する大クラフトについていくつかの仮説を 立てていた、それがこの世界の終わりを待ってはいけないということが 一つにあった、この世界の終わり、すなわちそれは世界の終わりに飲み込まれるという ことであることを予感していたのだ。
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