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「はい、シャンドラ、もう一度ハクと、向き合えるのなら」
クレアは少し笑って、そう答えた。
そしてルナが間をおいて話し出す。
「これでお膳立てはそろったようね、これからのことを整理するわ、
まず私が世界の均衡を崩す、その後、本来残るはずだった者だけの
状況を作る、これはシキの行動を本来あるべき行動にするため、
シキを移動させないと、白狼がどういう行動するか予測できない、
シキはアリエルがいる場所を探す、そして白狼はシキを殺しに動く、
シャンドラ、アグリア、クレアさんはシキの後をつけて、白狼を
説得、またはできなければ…」
ルナがそこで言葉を区切る。
「殺さなければならない、加減をして勝利できる相手ではないもの」
クレアに当てた言葉であったが、クレアは沈黙する。
「フレヤさん、貴方は貴方のやるべきことをやればいいわ」
ルナが少し大きめの声でそう言った。
それはすぐ近くのドア向こうまで聞こえるような、そんな声量。
そして、力なく、ドアが開く。
「すみません、気に、なってしまったので…」
とても申し訳なさそうに、けれど、フレヤの表情はとても辛そうなものであった。
「気にするな、どちらにせよフレヤ、君にも伝えるべき内容だった」
シャンドラがすでに冷めた紅茶を啜りながら言う。
「後はシキがアリエルを救えるかどうか、この世界の終わりを知ったシキが
どうでるかわからないけれど、もしかしたら、アリエルと一緒の終焉を望む
かもしれないけれど、けれど…」
ルナが珍しく、目をふせて感情的な表情をする。
「私との約束を忘れていなければ、アリエルを救って、この世界を開放するはず」
ルナが言葉にしたものは、おおよそ作戦と言えるものではなかった。
一同が沈黙し、未知数のこれから起こりうる、大クラフトの崩壊という事態に恐怖して
いた。
「はぁ、全くお粗末だ、だが、いいじゃないか、何より手っ取り早い」
シャンドラが薄気味悪い表情を浮かべる。
そこにいる全員が異常性を感じたが、それ以上に切迫した現状の慰めにもなった。
「私はこれからミラ・ブランソンにクレアと共に会いにいく、私たちが帰ったら、
決行だ」
シャンドラのその言葉に、一同が頷いた。
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