第七幕「この胸の苦しい想いは」

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--------------------------------------------------------------------------------- アリエルが自室を出た頃、 シャンドラとクレアがミラとの対話を終え、シャンドラ邸へと帰還する。 「ねえ、どうだったミラ、元気にしてた?」 帰ってきたシャンドラに、ヘレンがにっこりとした笑顔で声をかける。 「君にミラを倒して、などしてもらえれば良かったかな」 シャンドラは冗談まじりにそう言ったが、ヘレンがそれを聞いて笑う。 「冗談、私は強い方につくからね、今なら当然…」 そう言いかけたヘレンをシャンドラが「わかっていたさ」、と言って建物の奥へと歩いていく。 ヘレンはシャンドラの絶対の味方ではない、いや、厳密には誰の味方でもない、 それがヘレン・バッシーなのだ。 シャンドラはクレアに別行動を支持して、ある場所へと向かった。 それはシャンドラの事務室だった。 事務室にシャンドラが入ると、そこにはルナとアグリアが待っていた。 「待たせた、ミラは問題ない、まあ、当てにはならんかもしれんが、  言わないよりはマシだろう」 そういったシャンドラが自室の事務椅子に乱暴に座る。 「アグリア、後はよろしく頼んだわ」 そう言って、ルナがシャンドラの事務室を出て行く。 アグリアはため息交じりに頷いて、シャンドラを、見た。 その瞬間シャンドラの中に、アグリアという魂が入ってきたのだ。 (おい、シャンドラ、聞こえるか) アグリアの声がシャンドラの頭の中で響く。 「聞こえているよアグリア、でも、なにかが変わったとは思えないな」 シャンドラは右手と左手のぐーと、ぱーを繰り返しながら答える。 (すぐには変化はないかもしれない、もしくは失敗か、まあその時は  覚悟を決めるしかない) アグリアは自分も消滅するのだというのにも関わらず、 実に他人事だった。 「あたしは何度か死に掛けた、この超越者のあたしがだ、  どこにでもある、だれにでもあるくだらない概念だ、  だが、今はそれを迎えるわけにはいかない」 そういったシャンドラは、笑っていなかった。 アグリアはそれを聞いて黙っていたが、やがて一言発した。 (それでも尚、私たちは生きていくのさ) ---------------------------------------------------------------------------------
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