第七幕「この胸の苦しい想いは」

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--------------------------------------------------------------------------------- 世界は崩壊していた。 ルナはしばらく唄を続けていたが、急に息苦しくなってそれを中断した。 呼吸困難に陥り、そして目を見開いた。 「なんなの、この、どす黒い感情は…、悪意、なんて圧倒的な悪意…」 ルナがはっとして外を見る。 外は暴風になりつつあり、荒れ果てていた。 「アリエル?違う、アリエルに似ているけれど、これは全く別の…」 「痛っ!!」と声を吐き出してルナが頭を抑える。 「なにこれ…、ずっと干渉されていた?私の大クラフトに?そんな…」 雷が、暗い教会を一瞬眩く照らす。 「シキが、あぶない」 そう言ってルナが協会の入り口へと振り返る。 また、雷が光る。そして、その影が一瞬あらわになる。 「貴方は…」 その影はゆっくりとルナに近づく。 そしてルナのすぐ近くまで来て止まる。 「ありがとうルナ、貴方は数少ない邪魔者だったの、  反則とか、話にならないとか、  いろいろあると思うけれどごめんね、  全部私が仕組んだことだったから」 その影は、にたりと、悪意をこめてルナに笑みを浮かべる。 ルナが呆然としてその影を見つめる。 「グッバイ、ルナ、貴方の大切なんて、最初からなかったのよ」 次の瞬間、ルナの姿がノイズ交じりに消えていく。 影の人物はルナに両手でバイバイと言わないばかりに、手を かざして左右に移動させる動作をしていた。 ---------------------------------------------------------------------------------
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