第七幕「この胸の苦しい想いは」

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長身の人影が、律儀に低い声で名称を名乗り、質問をしてきた。 ルナはナインスカル、という名称に心当たりが合った。 古くから異能力者と呼ばれる者たちで構成された情報組織で、 骸骨の頭部をモチーフとした装飾に身を包んだおかしな集団だ。 元々はプロパガンダを目的とした組織であったが、現在は武力を持って 世界に対し独自の思想をもって介入する国家を持たない戦争屋の ようなことをしている。 「私はシャンドラの仲間ではないわ、けれど今は協力している、  ある目的のために」 そう、ルナは曇りなく言った。 それを聞いた小柄な人影、赤みかかったくせ毛に、少しそばかすの見える女は 笑った。 「はは、嘘を言えばいいものを、自信満々ですね、まあでも、  私たちは貴方をすぐに殺そうってわけじゃないので、  安心してくれればいいです」 ぎり、と小柄な女が歯をかみ締め、そして続けた。 「ですがですよ、あの世界では奇襲をかけたつもりだったんですが、  あのヘレンとかいう女に邪魔されちゃいまして、  私すごくイライラしているわけですよ」 小柄な女がルナに近づく。 「言っている意味がわからないわ」 ルナは冷静に言葉を交わす。 小柄な女がルナのすぐ目の前で立ち止まる。 「こちらに戻ってきたシャンドラを殺すのを、邪魔するなよって、ことですよ」 ドスの聞いた低い声で小柄な女が言った。 ルナはそれを聞いてぽつりとつぶやいた。 「無事に、戻ってこれたらね」
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