28人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうやって宿った人間の願いを聞いて、アンタは世界として生きているってこと」
私は俯いて、ぽつりと呟いた。
(言っただろう、ボクたちは君たち人間に作られた願いだって、ボクたちは君たちの願いを叶えることでしか存在できないんだ。だからずっとこの繰り返しさ、わかるかい?この虚しさが、憤りが、与えられて、そうすることでしか『生きている』って実感できない存在の痛みが)
こいつは夏の青空を見上げて、うっすらと笑った。それはいつもの小ばかにした笑みではなく、きっと泣いている類のものなのだと思った。感情の表現すら知らない、こいつらは、そういう生き物なのだと、思った。
「恋がしたいわ」
そう言った瞬間、さすがの大クラフト様も同様を隠せなかったみたいだった。
(……は??)
「だから、恋がしたいって言ったの、それが、私の願い」
目をぱちぱちさせて、何度も言葉を反すうしている様だった。なんだかようやく一矢報いたようで、私は実に愉快な気持ちになった。
「アンタ言ったわよね、十分すぎるくらいだって、私もそう思う、でも、ずっとこんな病院で、一人で生きてきて、だから、せめて願いが叶うのだとしたら、不自由のない身体で、普通の女の子がするような、当たり前の恋がしたい、女に生まれたんですもの、それくらいのわがまま、最後に願ったって、良いと思わない」
21番目の大クラフトという存在は、それを聞いて、笑みを浮かべて、ゆっくりと頷いた。
(わかったよ、それを、その君の最後の願いを、叶えよう)
その会話が、私と、私に宿った21番目の大クラフトとの、最後の会話だった。
最初のコメントを投稿しよう!