28人が本棚に入れています
本棚に追加
ルナはそれを聞くと、もう言うことはないという顔でソファから立った。
「わかったわ、もう止めることはしない、けれどガーディナル、今一度よく考えてみることね、ラシュディ家の人間はもうアリエルしかいない、つまり、貴方の甥であるアリエルが死んでしまえば、貴方の親族はこの世からいなくなるということ」
ルナの言葉を聞いて、ガーディナルがルナを罵倒する。
「君に何がわかる、大クラフトの代償などなくとも、あの子に時間などそう長くは残されてはいない、あの子の葛藤も、思いも、我々には到底理解の及ばないものだ」
それを聞いて、ルナは少し目を伏せる。そして応接室の出口へとゆっくりと向かう。出口のドアの前で振り返ってガーディナルを見る。彼は頭を抱えながら顔を伏せている。もう、ルナのことなど見ていない。
「後少しなのだ、後、少し……」
そう、呪文のようにぼやいているのが聞こえた。
応接室を出ると、そこにはルナの友人、アグリアが壁にもたれかかって待機していた。
「で、どうだった、まあ、結果は聞かなくてもわかるけどさ」
ルナはアグリアの言葉が聞こえているのか聞こえていないのわからない顔でアグリアを一瞥して、アリエルの病室へと向かう。
「そろそろ潮時なんじゃないのルナ、この数年、良い隠れ蓑にはなったけどさ、あのガーディナルとかいうおっさん、もう駄目そうじゃない?」
無言を貫くルナに対して、退屈そうにルナの後を付いていくアグリア。けれど、次の瞬間に急にルナが立ち止まり、アグリアへと振り返る。
「もうそういう段階の話じゃないわ、このまま私たちがアリエルとガーディナルを放置すれば、東京はとんでもないことになる、いえ、いずれは東京だけじゃない、この国そのものが大クラフトに飲み込まれてしまう可能性もある」
最初のコメントを投稿しよう!