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アグリアはそのルナの言葉とは対照的に、冷静に返す。
「なら何故大クラフトの展開に手を貸した、アリエルの状態を見れば容易に想像がついたはずだ」
「まだエンピレオ協会に気づかれるわけにはいかなかったのよ、私は、私の目的のために」
はあ、とアグリアがため息をつく。
「ったく、女ってのはつくづくしょうもないことにしがみついているもんなんだね」
それを聞いてルナは方を竦める。
「あら、貴方だって立派に女性だと思っていたけれど」
アグリアは髪をがしがしと乱暴に掻いて答える。
「だから厄介なんだろ」
二人は足を進め、病院の最上階にあるアリエルの病室にたどり着く。
いつもは静かなはずのその病室に、得体の知れない何か、の気配を感じた二人はアリエルの病室に駆け込んだ。
「……ルナ、それにアグリア、どうしたの?」
そこには拍子抜けするほど温和なアリエルと、見慣れない少年が会話をしている様だった。
「……誰」
ルナが少しきつめの口調で、アリエルの病室に入り込んだ少年を見る。
「どうも、黄泉野シキって言います、妹がラシュディさんのお世話になってるって聞いたので、挨拶にきたんです」
あどけない、年齢は12、3くらいだろうか。けれどどこか違和感の感じる少年に、ルナは警戒心を解くことをできなかった。
「用件が終わったのであれば出て行きなさい、ここは貴方が来て良い場所じゃない」
敵愾心むき出しのようなきつい瞳でルナはシキに対峙する。しかしそんなルナに対して、シキはぽかんとしたような表情でどこか緊張感がない。シキは少し笑みを浮かべると、ルナにゆっくりと近づいていく。
「ちょっと、近づか……」
そう言うよりも早くシキはルナをやさしく抱きしめた。
「おお」
アグリアが少し面食らったような顔になり感嘆な声を上げた。
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