第八幕『大クラフト』

12/28
前へ
/145ページ
次へ
 3:安らぎの時間  ■2028年 8月20日 「え、えすえふ……?」  シキのその言葉を聞いてぽかんとしたのはアリエルだった。そこはシキの妹の病室で、シキとシキの妹のサヤ、そしてアリエルが集まっている。  アリエルは物語を書いているという話をしていた。それはどんなものでも創造できる自由な感覚で、その世界の参考意見としてアリエルはシキの話を聞いていた。 「そう、日本はなくなっちゃってさ、そうだ、なにか観測不能な出来事で、そして世界にはそうだな、ロボット、ロボットがたくさん普及している、そんな世界恐慌な世界でも人は自由に、楽しく生きている」  アリエルはシキの考えを理解できないという風に、でもシキの考えをノートにまとめていく。 シキの言う世界観は、アリエルにとってはとんでも話ばかりであったけれど、それをノートに書き留めていく作業も、今のアリエルにとっては楽しい作業だった。 「はあ……、物静かな様でシキ君も男の子なのね、サヤちゃん、こんなお兄さんを持って大変じゃない」  サヤは何も答えない。表情は無表情で、けれど首を横に振る。  シキの妹のサヤは、とある出来事によって強いショックを受け、感情を失った状態が続いていた。普通に生活は行えるが、まるでその人形の様な対応は不気味で、まともに周囲との関係性を保てる状態ではなかった。 「まったく、サヤちゃんはシキ君に甘いのね」  やれやれ、という風にアリエルが頭に手を添える。 「アリエルはどうなのさ」  シキが今度はアリエルに問う。それはアリエルだったらどんな物語、世界を描きたいか、というものだった。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加