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3:安らぎの時間
■2028年 8月20日
「え、えすえふ……?」
シキのその言葉を聞いてぽかんとしたのはアリエルだった。そこはシキの妹の病室で、シキとシキの妹のサヤ、そしてアリエルが集まっている。
アリエルは物語を書いているという話をしていた。それはどんなものでも創造できる自由な感覚で、その世界の参考意見としてアリエルはシキの話を聞いていた。
「そう、日本はなくなっちゃってさ、そうだ、なにか観測不能な出来事で、そして世界にはそうだな、ロボット、ロボットがたくさん普及している、そんな世界恐慌な世界でも人は自由に、楽しく生きている」
アリエルはシキの考えを理解できないという風に、でもシキの考えをノートにまとめていく。
シキの言う世界観は、アリエルにとってはとんでも話ばかりであったけれど、それをノートに書き留めていく作業も、今のアリエルにとっては楽しい作業だった。
「はあ……、物静かな様でシキ君も男の子なのね、サヤちゃん、こんなお兄さんを持って大変じゃない」
サヤは何も答えない。表情は無表情で、けれど首を横に振る。
シキの妹のサヤは、とある出来事によって強いショックを受け、感情を失った状態が続いていた。普通に生活は行えるが、まるでその人形の様な対応は不気味で、まともに周囲との関係性を保てる状態ではなかった。
「まったく、サヤちゃんはシキ君に甘いのね」
やれやれ、という風にアリエルが頭に手を添える。
「アリエルはどうなのさ」
シキが今度はアリエルに問う。それはアリエルだったらどんな物語、世界を描きたいか、というものだった。
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