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「私?そうね、私だったら、中世のお城のような学園を舞台にするでしょ……」
えーと、と考えるアリエルに対して、シキが口を挟む。
「でもアリエル、日本が消滅しているような世界で学校とかのんびり通ってるかな」
シキの言葉にアリエルがすかさず返す。
「通ってるわよ、シキ君の世界はどれだけ世紀末なの、そうね、日本が滅びているなら、海外が舞台でいいじゃない、そこにおしゃれな学園があって、雰囲気の良いカフェもあって、そこで外国人のヒロインの女の子と、日本からやってきた素敵な男の子が……」
そこで恥ずかしそうに言葉を切るアリエル。
「人種の壁を越えて恋をするの!なんならそこに幾多の苦難を加えてもいいわ、ロボ、ロボットだっけ?そういうのを加えて」
少しばかり興奮気味に言うアリエルに対して、シキは冷静に答える。
「うーん、外国人の男性と日本人の女性ならよく聞くけどさ、リアリティがちょっと足りないような」
「ちょっと、日本をいきなり消滅させたり、ロボットがどうとかいうシキ君に言われたくないんですけど」
シキがやれやれ、という小ばかにした態度で首を振る。
「アリエルはわかってないんだよ、SFはサイエンスフィクションなんだから、元々リアリティは優先じゃないの」
まるで子供のようなことを言うシキに、アリエルは呆れ顔だけれど、その状況を充実して過ごしている様に見えた。病院の一室の中で、三人は幸せというものを実感していた。
「ああ~、早く白馬の王子様が私の前に現われないかしら」
キラキラとした目で遠くを見るアリエル。
「王子様ならもう僕がいるじゃない」
そう、真顔でシキが言った。
アリエルはそれを聞いてきょとんとしたが、すぐに平静を装って返す。
「子供が生意気いってんじゃないの、それにシキ君、ルナにも良い顔してたくせに、君が王子様だったら、それは浮気の王子様だわ」
それを聞いてシキが反論する。
「違うよ、僕はみんなの王子様でありたい、アリエルや、ルナ、そしてサヤのね」
アリエルがちょっと引いた顔でシキを見る。
「うわ、女の敵が育とうとしているわ、サヤちゃん、キチンと教育しないと駄目よ」
サヤが今度ばかりは少しじとっとした目でシキを見ていた。
「え、えーと、いや、騎士あたりにしておこうかな」
そこには幼い、周りに取り繕った年相応のシキがいた。
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