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4:病
■2028年 10月5日
「あの、看護婦さん、アリエルは……?」
秋のとある時期から、アリエルの病の状態が悪化し、自由に外を出歩けないどころか、病室のベッドで寝たきりの状態が続いていた。面会もしばらくは遮断され、シキはアリエルと会話のできない日々が続いていた。
「ルナ……」
アリエルの病室の前で立ち尽くしているシキを、ルナとアグリアが見つける。
「シキ、どうしたの、少し、痩せたんじゃないの」
やさしく言葉をかけるルナとは対照的に、シキは元気なく返事をする。シキは見るからに顔色が悪く、目の下もくまが見られるほどに衰弱していた。
「最近眠れないんだ……、嫌な夢ばかり見る、アリエルの嫌な夢……」
アリエルが病に臥せって以降、シキもだんだんと体調を崩し、妹の面倒を見にきているはずのシキが病院でいくつかの検査を受けるようになっていた。不眠症のような症状であるが、とりわけて身体に病があるわけでもなく、精神的なものだと診断されていた。
「怖いんだ……、この現実が現実じゃないように思えて、まるで何かにあざ笑われているような、そんな恐怖が……!」
取り乱すシキをルナが抱きとめる。
「落ち着いてシキ、大丈夫よ、ここは現実よ、私はここにいるわ」
取り乱すシキを落ち着かせた後、シキを看護婦に任せ、ルナとアグリアが病院の屋上へと出る。
季節は秋の肌寒い時期で、空は曇り空が広がっていて、どこか屋上から見える景色も、色彩をなくした世界に見えた。
「どういうことだ……?」
アグリアがルナに質問する。それはアリエルが病に伏せたと同時に起こったシキの体調についての疑問だった。シキは華奢な体格であったが、身体自体は健康に見えた、それがアリエルが病に臥せたこの二週間ばかりであの衰弱具合は異常だった。
「いけないわね、アリエルがシキを大クラフトの中枢に引き込もうとしている、おそらく無意識のことなのでしょうけれど、アリエルの無意識化の干渉をシキが受けすぎて、悪夢のようなものを見ているのだわ」
アグリアがその言葉に疑問をさらに投げかける。
「アリエルの意識が干渉している悪夢って、そりゃなんだよ」
それを聞いてルナも言葉を詰まらせる。
「わからないわ、アリエルが内に抱える、何かとしか……」
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