美術室で

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子供の頃から、友達と遊び回るより、絵を描くほうが好きだった。 画用紙やチラシの裏面の白紙は、私にとってのキャンバスで、鉛筆やクレヨンは、絵筆になった。 真っ白な世界に自分の好きな色を付け足していき、彩りを加え、脚色していく、上手い下手は別にしても純粋に楽しいと思える、小学生の時も、中学生の時も絵を描くことに没頭し続けた。 私、白木環[シロキ、タマキ]は、元来の引っ込み思案な性格が災いして。 「だからさー、言ってあげたの、近寄んなーって」 「マジで? あたし、できないよ」 「いや、ガツンと言うべきだって、言わないと調子に乗るし」 教室のおしゃべりを聞き流しつつ、隅っこの席で縮こまり、一心不乱にノートに鉛筆を走らせる、私がいて、いわゆる、教室に必ずいる、空気みたいな存在の一人ぼっちさんである。 いや、いいのだ、私は好きな事をやっているのだから、寂しくなんかない。 寂しくないんだが、最近の流行が全く、わからない。 「どうにかしなくては……」 一人、呟くも、どうにもならない虚しさだけが漂う。
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