美術室で

4/27
前へ
/29ページ
次へ
「……あ」 一人、思考に耽っていた私は、目的地に通り過ぎてしまった気づき、廊下を戻り、美術室の鍵を取り出し、扉を開く。 絵の具の匂いが鼻をつき、放課後の閑散とした雰囲気にどこか落ち着いた安心感を覚えつつ、鞄を机に置いて、ノートを取り出し、適当な落書きみたいな下書きを描いていく。 中学生の頃も、美術部員だった、私は美術部に入部。 ただし、廃部寸前の美術部にだけれど、定員は三名。 一人は幽霊部員で一度も顔合わせしたことがなくて、三年生の先輩部長も来ない事も多い、自動的に一年生ながら副部長に任命されてしまって、半ばここでも、一人ぼっちさん、どっちにしろ、大勢の部員が居ても埋もれて終わりだろうけど。 ピタッ…………っと、何か、ひんやりとした物が私の首筋に当てられ。 「あっふゃーー!!」 美術室に、私の悲鳴が轟き。 「相変わらず、ナイスリアクションだね、白木さん」 ニッコリ笑顔に、両手に缶コーヒーを持った、部長がいた。 私は、ただ、水槽の中の金魚みたいにぱくぱくと口を動かすだけだった。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加