天才児

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天才児

  1580年   「伝達!信忠(信長の子)様! 信長様が!本能寺にて光秀様の謀叛ッ!」   「爺ッ!父上を助けに!」   「…。」   男はいつしか無くした自分の指を見ると目を瞑り 手をギュッと握りしめた。       『【過去・1560年】   「小平太ッ!!  おのれ治部大輔!」   「フンッ!」   「下尅上は我を選ばぬ…か…」   「お…お強い。」   今川義元は口から血が滴り落ちると言い放った。   「見事。」   「指がのぉなった…。   ハッ…ハッ…ハッ…。」      【晴天なる桶狭間】   「おみゃぁら手ぇ出すんじゃねぇッ!!」   「介錯致す。」   今川義元はその場に座ると笑みを見せた。   『織田…信長…  漸く会えたな…』     「のけッ!退けよッ!!」     指を無くした男は 今川義元の首を叩き斬ったのだった。   「退けッ!」   義元の首を見た信長は 暫く立ち尽くし唾を呑んだ。   服部小平太達は倒れた義元に近付いて呟いた。     「吉…。 (吉法師・織田信長、幼名) おれたちゃ… とんどもねー事しちまったのかもしれねぇ…」   「…。」   「あぁ…あの…今川義元をぶっ倒しちまったんだから…」   その言葉に信長は暫く黙り言葉を発した。   「ワシらは大将も糞もねぇ。 こんな着飾ってもねぇ…     【やっちまったんだで。】」     「戦国世を俺達が変えちまった…」   織田軍は 横たわる今川義元をいつまでも見続けるのだった。  
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