小臼屋積

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午後6時。 俺はそいつの側に歩み寄ることにした。 茶色のネクタイに赤のラインということは、この生徒は三年生か。 「あの」 俺はそいつに声をかけた。 先程まで携帯の液晶にじっと向けられていた男子生徒の視線は、 ゆっくりと俺に向けられた。 「君が待ってるのって、もしかして俺?」 なんと声をかけていいかわからず、 我ながら変な日本語を話した。 メリーに相手の名前くらい聞いておくんだったな……。 「あ……」 男子生徒は小さく声を上げると、 ぱっちりした丸い目をさらに大きく見開いた。 「桂介くんですよね!」 きた。 俺は心のなかでガッツポーズを決める。 予想は当たりだった。 男子生徒はやけに嬉しそうに言葉を続けた。 「メリーさんから話は聞いてます! 蜂谷桂介という人が、先週の事故について、僕と同じ考えを持ってるって!」 「やっぱりそうか。 えっと、ところで君の名前は?」 「僕、小臼屋積(こうすや つもる)といいます。 あの、ところで……」 「ん?」 「どうして僕が桂介くんと待ち合わせしてるってわかったんですか? 他にも生徒はいたのに……」
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