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「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃあああああん!!」
玄関の戸を開けるなり叫びだした妹が、俺の部屋へノックもなしに飛び込んできた。
こんな深夜とも早朝ともつかない時間に迷惑なやつ。
「なんだよ、マツコ」
「見ちゃったの!! テケテケ、見ちゃったの!!」
妹のマツコは潤んだ瞳で俺を見つめた。
体は小刻みに震えている。
「テケテケって、確か上半身しかない女の霊だったか。本当に見たのか?」
「お兄ちゃん疑うの!? 本当に見たわよ! ランニングしてるときに……」
言うと、マツコは床にうつ伏せになって、ほふく前進をはじめた。
「こうやってね! 肘だけ使って這うように動いてたの……上半身だけで。あの噂は本当だったのかな……」
「まさか……。何か動物を見間違えただけなんじゃないのか?」
「そ、そうかな。
でも建物の隙間から見えただけだし、距離あったし、怖くてじっくり見たわけじゃないから、本当に見間違いだったのかも……」
「そうだよ。テケテケは都市伝説、いるわけない」
俺はちらっ時計に目を向けた。
午前4時を過ぎている。
「とりあえず一旦寝て――」
「やだよ! お願いお兄ちゃん、学校の時間まで一緒にいて!!」
いつも生意気なマツコだが、涙声で言うと、俺をぎゅっと抱き締めて離さない。
瞼は今にも落ちそうだったが、溜め息とあくびは心の中に留めて、俺はマツコの頭をなでてやった。
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