夢を描く手

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学生達の憩いの場。 ブレイクアウトルームから続く芝生の張ったテラスに、 もう見慣れた後ろ姿を見かけた。 空を望むテラスの際。 その手摺りに体を預けて、うな垂れる頭。 吸い込まれるような空を見上げる事などなく、その背中はただ丸まっている。 「先輩、」 声をかけると、落ち込んだ背中は やおら、こちらを振り返った。 「あー……可南子ちゃん……」 少しだけ湿った初夏の風が先輩の髪をくぐり、私の頬を撫でた。
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