4月。

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この子とはあまり一緒にいたくないな。 そう思って、どう会話を切ろうかと考えあぐねていると、ちょうど担任教師が入ってきた。 うっすらと頭頂部付近に辛うじて残った髪のせいか、やたら薄幸そうな中年教師だった。一見して数学担当だろうか。 彼が出席簿を小脇に抱えて教壇に立つまでの間に、教室内のあちこちでぼそぼそと聞こえていた声はきれいさっぱりなくなってしまった。 そういうところは流石進学校。 皆出席をとりはじめてもきちんと返事をしている。 やたらとか細い声の女子、冷静で少し気取った感じの男子の割合が多いと感じるのは、私自身の偏見だろうか。 このクラスでうまくやっていけるのだろうか。 新入生独特の不安を胸いっぱいに押し込めて、私は頬杖をついたまましばらく周りの人間を醒めた目で見ていた。
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