1、七夕祭り

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一年前の七月七日、七夕。 「おばあちゃん、ゆうちゃんと夕飯食べたら帰ってくるから、夕飯はおじいちゃんと二人きりで食べてね」 私は、祖父と祖母と弟と住んでいる。 父と母は交通事故で何年も前に亡くなってしまったから。 私は浴衣をおばあちゃんに着せてもらって、 「行ってきます!」 下駄を鳴らして明るく家を出て行く。 待ち合わせ場所に、友人のゆうちゃんも浴衣を着て待っていた。 「としちゃん!」 「ごめん、ごめん」 手を振り駆け寄る。 夕方から出掛けて、女同士二人で食事をして花火大会の花火を見に出掛けるデートコース。 実は、彼氏にフラれたの。 サラリーマンの彼氏は東京に転勤。 祖父と祖母と暮らす私が東京には付いてはいけないでしょ。 だから…。 だから、彼氏は二股かけてた別の女性と東京へ行く事になって。 私は、きっぱりとフラれたの。 35歳の私が、そんな事で時間を掛けて悲しんでなんていられない。 だから、今夜は友人のゆうちゃんと七夕祭り。 早い食事を済ませて、河川敷にある花火大会の会場近くへと向かう。 堤防沿いには夜店が並び、私たちは食べたばかりなのに、目移りばかりして歩いていた。 「チョコバナナは定番でしょ?」 「定番はリンゴ飴だよ」 「綿菓子は帰りに買って帰ろっかな~」 「ねぇ、ゆうちゃん。後でかき氷食べようよ?」 ……。 「ねぇってば?」 ……。 あれ? あれれ?……。 やだ、嘘でしょ? 私は人混みで流れていく、辺りを見渡した。 ゆうちゃんがいない。 立ち止まり、はぐれてしまった私は、その人混みにグイグイ押されて、携帯電話すらも取り出せなくなっていた。
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