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やむを得ず、道からそれた暗がりに行き、巾着袋から携帯電話を取り出す。
真っ暗で、人っ気もない。
怖いけど、仕方ない。
ゆうちゃんに電話しよう。
その時だった。
「ヘイヘイ、か~のじょ。もしかしてお一人様?」
酒に酔ってるのか、明らかに臭い男たちが私に声を掛けて来た。
「こんな所で一人ってのは、危ないよぉ?お兄さんたちが安全な場所へ連れて行ってあげるよぉ?」
三人の男たちが、私を取り囲む。
「いいですって、ほっといて下さい」
私は、うっとうしいから睨み付けた。
「ありゃ~、なかなか可愛いね」
「そんなふうに挑発されたら、たまらないねぇ~」
「お兄さんたちとキスしよ、キス!」
コイツら、私がいくら童顔だからって明らかに子ども扱いしてない?
「もっと若い子狙って、声掛けたらどうです」
って言っても彼らは無視。
私の言葉なんて聞いちゃいない。
それどころか、ついに腕を捕まれた。
「離してよ!」
もう一人の男が、私の顎を掴んだ。
や、やばい!
「い、いやだ!」
唾でも吐き捨ててやろうかとした瞬間…。
「何してんだ!」
大きな怒鳴り声がした。
えっ?
「ダメじゃないか、探したんだぞ」
ザクッザクッと草を踏みつけて男が、一人堂々と歩いて来た。
「すいません、僕の彼女がご迷惑掛けたみたいで。お世話掛けました」
はぁ?
「…ったく、何だよ。男いんのかよ」
「チェッ、つまんねぇ~な」
頭を下げて、その男は言う。
「本当にありがとうございました」
そんな誠意のある行動に、酒まみれの男たちは、頭が冷めたみたいで、その場をさっさと去って行った。
「…大丈夫?」
振り返ったその瞬間、パタパタパターッとスターマインの花火の音がした。
その光の色に、その男の顔がはっきりと見えた。
「…はぐれた?もしかして…」
色白の薄い透き通るような肌。
前髪にかかるか、かからないかの、きりっとした上あがりの眉。
まっすぐに延びた睫毛。
一重瞼のつり目なんだけど、口唇はプックリと甘い感じ。
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