1、七夕祭り

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やむを得ず、道からそれた暗がりに行き、巾着袋から携帯電話を取り出す。 真っ暗で、人っ気もない。 怖いけど、仕方ない。 ゆうちゃんに電話しよう。 その時だった。 「ヘイヘイ、か~のじょ。もしかしてお一人様?」 酒に酔ってるのか、明らかに臭い男たちが私に声を掛けて来た。 「こんな所で一人ってのは、危ないよぉ?お兄さんたちが安全な場所へ連れて行ってあげるよぉ?」 三人の男たちが、私を取り囲む。 「いいですって、ほっといて下さい」 私は、うっとうしいから睨み付けた。 「ありゃ~、なかなか可愛いね」 「そんなふうに挑発されたら、たまらないねぇ~」 「お兄さんたちとキスしよ、キス!」 コイツら、私がいくら童顔だからって明らかに子ども扱いしてない? 「もっと若い子狙って、声掛けたらどうです」 って言っても彼らは無視。 私の言葉なんて聞いちゃいない。 それどころか、ついに腕を捕まれた。 「離してよ!」 もう一人の男が、私の顎を掴んだ。 や、やばい! 「い、いやだ!」 唾でも吐き捨ててやろうかとした瞬間…。 「何してんだ!」 大きな怒鳴り声がした。 えっ? 「ダメじゃないか、探したんだぞ」 ザクッザクッと草を踏みつけて男が、一人堂々と歩いて来た。 「すいません、僕の彼女がご迷惑掛けたみたいで。お世話掛けました」 はぁ? 「…ったく、何だよ。男いんのかよ」 「チェッ、つまんねぇ~な」 頭を下げて、その男は言う。 「本当にありがとうございました」 そんな誠意のある行動に、酒まみれの男たちは、頭が冷めたみたいで、その場をさっさと去って行った。 「…大丈夫?」 振り返ったその瞬間、パタパタパターッとスターマインの花火の音がした。 その光の色に、その男の顔がはっきりと見えた。 「…はぐれた?もしかして…」 色白の薄い透き通るような肌。 前髪にかかるか、かからないかの、きりっとした上あがりの眉。 まっすぐに延びた睫毛。 一重瞼のつり目なんだけど、口唇はプックリと甘い感じ。
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