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じめじめとした地面。辺りにはうっそうと草木が生い茂る。葉と葉が重なり合いわずかな光だけが地面を照らす。
泥にまみれ、体には至るところに傷を負って倒れている少年がいた。いや、少年と呼ぶにはあまりにも幼い。
どれほど時間が経過したのだろうか。この森に暮らすある魔物がこの子供を見つける。
魔物が仲間を呼ぶ。
普通魔物が人間を助けることはほぼない。彼ら自身も人間から傷を負わされてきた者たちばかりである。
そのはずなのに彼らはその幼子に寄り添い体を温める。火を焚くもの、果物を集めるもの、彼を心配そうに見つめるもの。すべて彼だけを思い、行動する。
倒れていた子供は重い瞼を開き、ぼんやりとした視界で一筋の光を見る。パチッパチッっと空気が破裂した音だけがこの空間を響き渡り、煙が上へ上へと上がっていく。
「ここは……どこ?僕は……誰?」
彼は何とか動こうとするが体が悲鳴を上げるため動くことができない。
自分はどうしてこんなところにいるのか、いったいどこから来たのか、痛みのせいでうまく思考をめぐらせることができない。
そしてそのまま彼は意識を手放してしまった……
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