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再び彼が目を覚ました時、目の前には覗きこむようにこちらを見る1匹の猿がいた。
目はくりくりとして大きく、綺麗な黒の毛並みがこの生物を覆う。
パキッっと音のなった方を見る。……1匹ではなかった。30、40匹はいるであろうか、彼を囲みこむように円を作ってその場に座っていた。
なかでも異彩を放つ1匹の猿と目が合う。色は白に近い灰色で他のものに比べると体は一回り大きい。
じっとリーダであろうボス猿を見ているとゆっくりとこちらに向かってくる。優しく、ゆっくりと頭の上で手を動かす。
暖かい……。身体的なものではない。心に染み込む暖かい何かが彼の心を満たす。
「ここは一体どこなの?」
彼はその猿に聞いてみた。しかし返事はない。手が止まる気配もない。
「ねぇ、答えてよ……あなたは誰なの?」
やはり返事はない。話す言葉が分からないのだろうか。今度は心の中を何かが破壊していく。
「ねぇ……お願いだよ……あなたは誰?僕はここで何をしていたの?僕はいったい誰なの?」
ピクっと手が止まりこちらをじっと見てきた。目に涙をためながらもじっと見つめ返す。
手をそっと握られ何かを渡された。ボス猿は突然バッっと顔を後ろに向け体を硬直させる。と思ったのも束の間、けたたましい叫び声をあげた後、彼のもとを離れて行く。
それに続いて他の猿たちもあの猿の後ろをついてゆく。
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