43人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
その大きな背中は徐々に小さくなっていく。
「待ってよ!おいてかないで!」
子供は立ちあがろうと力を振り絞るが立つことができない。
「お願いだよ!1人は嫌だよ!」
必死に声を絞り出す。しかしその声は届かない。
火は最後の力を出し切ったかのように徐々に小さくなり――消える。辺りは静寂に包まれる。
泣いて、泣いて、涙が枯れるまで泣き続けた。――孤独、それが彼を苦しめる。
…どれだけ時間がたったのであろうか。既に彼は涙を枯らしてしまった。
太陽が真上に上がり、風が暖かい風を運ぶ。にもかかわらず体はひどく冷たさを感じる。
力が出なくなった手は地面と触れあう。次第に握りしめていた手が開き、手から光が放たれる。正確には何かが光を反射していた。
――指輪だった。あの猿が渡したものだ。今度は指輪自身が光り出す。
優しい光が子供を包み込み声が聞こえる……
”……ソラ……私の可愛い子………”
「……誰?きみはいったい誰なの?」
“……ソラ……”
「ソラって言うの?きみは何処にいるの?」
“私の愛しい子……ソラ……”
優しく彼を包んでいた光は徐々に淡い光に変わり、消えていく……
「え?どういうこと……?ねぇ待ってよ!置いてかないで!」
彼の体に何かが伝わった気がした。冷え切っていた体が再び熱を取り戻す。
最初のコメントを投稿しよう!