二度目のオンステージ

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「よっ、実行委員長!このお祭り女!いい事言うじゃねえか!」 篠原のヨイショも小気味良く響く。このお調子者達、日々の発声練習で更に声が大きくなったような気がするな。そんなことを考えていると、小晴は不意に俺達に掌を向けた。 「まあ、ボクが出しゃばるのはここまで。最後に主演の二人から、気合いの一言貰ってステージ行こうか!じゃあメリーちゃんよろ!」 元気よく指名されたメアリーは、少し困ったように破顔すると一歩前に出た。そしてその麗しい微笑を浮かべつつ、皆の顔を見回しながら口を開く。 「…ここまで全員で頑張ってきた事は、全員が知っている事でしょう。勿論私もです。…だから、私が言える事は一つだけ。 …楽しみましょう、心の向くままに。そして最高の舞台にしましょう!」 モチベーターとして完璧すぎる答えだった。そうまで言われては、後に続く俺まで緊張するじゃないか。振った柴田は絶対に順番を間違えている。俺は苦笑すら浮かべながら、一つ咳払いをして向き直った。 「えー、俺の言いたいことも概ねメアリーの言った通りだ。台詞は皆の脳に刻まれている。後はそれを口にして、心のままに演じればいい。シェイクスピアの言葉を借りるなら、『この世は舞台、人は皆役者』ってところであって…」 「ヤマさん、一言一言!」 柴田の茶々で我に返り、俺はすぐに切り返す。 「悔いなくやりきろう!以上!!」 しゃあっ、応!などと多種多様な返事が響く。それぞれが持ち場に向かう中で俺は一息つくと、近くに立つメアリーに向き合った。 「…らしくなく長い言い回しでしたね」 「緊張した方が舌が回るのかもな。水差しちゃったかな」 「いえ。私は好きでしたよ」 微笑みながら返すメアリーに、俺の心が温まる。気付けば心臓の震えが心地よい振動にすら感じ始めていた。俺は衣装の皺を伸ばすように裾を引っ張ると、下手に向かって歩き出す。 「じゃあな、メアリー。いいやジュリエット。また舞台で会おう」 「ええ、また。ロミオ」 少し気障な言い回しをして、二人はそれぞれの舞台袖へと向かう。程なくして準備が整って、暗転の後ブザーがけたたましく鳴り響く。こうして俺達の舞台が始まりを告げたのだった。
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