来訪者は海の向こうから

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カーターカンパニー。大手ブランド品メーカーの商品を扱い、世界中にその輸出を担う世界的ブランド品問屋である。その企業の始まりは産業革命時代にまで遡る、歴史ある企業なのだとか。俺の父は貿易企業に勤めており、以前からカーターカンパニーから商品の発注を受けていたそうだ。 そのカーターカンパニーの現ゼネラルマネージャーである、ジャック=カーター。彼には娘が居て、ある日突然日本にホームステイしたいと言い出した。俺が父から聞いたのは、大まかにまとめるとそのような内容であった。 「…それはわかった。でもどうしてよりによってウチなんだよ?普通そういうのって公募したりするもんなんじゃないの?」 「まぁ公募となると色々と手続きが面倒らしいからな。…何よりも一番の理由は、悠斗。お前だよ」 ビールをコップに注ぎながらそう言う父。だからどうしてそうなる? 「カーターGMの娘…メアリーというらしいが、その娘はお前と同い年らしい。生憎父さんの同僚には年の近い子供を持つのが居なくてな。どうせホームステイするなら年の近い奴がいた方が良いだろうということで」 「滅茶苦茶だ…。それに、母さんは何て?急に言われても困るだろ」 「母さんは別に構わないわよ?」 母がおつまみを出しつつ台所から出てくる。これまたどこにでもいそうな主婦である。 「それに、あんただって今日から春休みでしょ?どうせ暇なんだから良いじゃない。ついでに英語教えて貰ったら?」 「う、うっさいな。俺は英語苦手なんだよ」 「はいはい、これで賛成2票!多数決で決定ー。話は以上だ、ハイ、やめやめ!飯にしよう」 「うわ、ずりぃ!」 「後、三日後は父さんどうしても外せない用があるんだ。お前が空港まで見送りに行ってきてくれ。これが特徴な」 「しかも押し付けかよ!これだから大人は嫌いなんだー!」 終業式の夜に盛大なカミングアウトを受けた俺。釈然としない気分のまま、気がつけば二日間があっという間に経っていた。
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