来訪者は海の向こうから

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「…でけぇ」 ローカル線の電車を数本乗り継いで、俺は空港に到着した。駅と空港が一体化しており、ロビーまでエスカレーター一本で到着したのには一種の感動のようなものまで覚える。 「さて、到着まであと10分程度ってところか…」 無駄に高い天井。ゴリ押し感の否めない物産展。デパートかと見まごうばかりに多く軒を連ねるショップや飲食店。ほとんど初めて空港に来たような自分にとっては目に映る全てが新鮮で、自分が場違いな存在であるかのような錯覚まで感じた。 では、そのアメリカ人の娘はどう思うだろう。そんな考えがちらりと俺の脳裏をよぎる。町から離れた空港に来ただけでこのような気分になるのだから、遠い異国の地からやって来て見ず知らずの外国人と共同生活をするとなっては、その不安とストレスは計り知れない。 (…せめて心のケアくらいはしてあげよう。それが俺に出来る最低限のことだ…) 『――間も無く、シアトル・タコマ国際空港発の飛行機が到着いたします』 心の中で決意を固めた瞬間、無機質なアナウンスが意識を現実に引き戻した。俺は慌ててポケットから、そのアメリカ人の少女の特徴が書かれたメモを取り出す。 「ふんふん、名前はメアリー=カーター。ブロンドのポニーテールで瞳は青。赤いキャリーバッグで…ん?」 俺は思わず、メモの最後の一文に目を通した瞬間に目を擦る。何やら変な文章が書いてあったような気がしたからだ。もう一度見てみても、やはりその文章は変わらない。最後の一文にはやる気の無い字で『パイオツカイデー』と書いてあった。何の情報だよ!しかもジェネレーションギャップ激しすぎるよ! 「…とと、いけねぇ。探さないとな。ええと、金髪ポニテの女の子ーっと…」 俺は黒縁眼鏡をぐいっと押し上げ、搭乗口からわらわらと押し寄せる人の波から件の外国人を探した。
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