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ここが始まりとは言い切れない
「話したことはないけれど、話は聞いているだろ?俺があいつの言う、ひとし先輩です」
「………まぁ、話にだけは……」
「あいつが言うように、妄想や架空の人間だと思った?」
車内は温かかった。暖房が効いていて、だけど車内独特の香りがしなかった。
不思議といい香りだと、いいきれるほどで、自分が拉致まがいに無理やり押し込まれたような不快感にはおそわれなかったのだ。
それと彼は運転手の隣の男。ひとしと呼ばれる、あいつによく聞かされた人物を見た時に、正直思ったのだ。
綺麗な顔だと。話し方も人に嫌みを与えない、柔らかい口調だった。
そして、自分が出会ったどんな人間とも違うと思えたのだ。
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