ここが始まりとは言い切れない

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それは一瞬の出来事であった。 瞬きをするほんの一時で自分の視界は変わった。 部屋が変わっている。 カチャリ。 『え?』 ベッドだ。 男女が2人眠っていたベッドから少し離れた場所に彼はいた。 そして男だけが起き上がり、拳銃を向けているのだ。自分に。いや、自分たちにだ。 『駿河さん?』 『え?』 そう、ひとしだ。 彼らは突然ひとしの部屋から別の部屋に移動していた。刹那の時間で。 『知り合い?』 『あの駿河さん?』 ひとしは、駿河と呼ばれるその男に近づこうとした。 拳銃は下ろされ、桐生は額に手をあてた。 「ん、駿河?どうしたの?」 女も起きたようだ。 その声にひとしは気づいて驚いた。 『廣澤………』 女もむくりと、上半身を起こした。 二人とも裸であった。 もしかしなくとも、気まずい場所に自分達はいるのだ。 「どうかしたの?」 彼女は駿河に訪ねた。 「いや、なんでもない。それより朝飯だ、起きろよ。学校、今日も行くんだろ?」 「んー」 気のない返事をする彼女。 駿河はさっさと服に着替えると、その部屋を出て行った。 廊下を歩く音が聞こえ、再びどこかの部屋をあける音がして、その後はしん、と静まり返った。 『嘘だろ?』 ひとしが口を開く。 『見えていないんだ』 『まさかそんな!…』
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