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夢も見ずに目が覚めた。
きっと覚醒と同時に忘れてしまっただろう。
ただ彼女は安堵した。見慣れた部屋であるからだ。
いつもの安心する香りが部屋にも、隣からも感じることができるから。
「ん?駿河どうしたの?」
駿河は上体だけを起こしてそこにいた。
頭痛を感じているようにも見えて、彼女は少し心配になる。
疲れているのだろうか。ふわりと頭におかれる彼の手は、心地よい重みと、温かい体温を感じた。
「何でもない」
「んー」
そう答えると駿河は、優しく目を細めてベッドから降りる。
彼は朝食と開店の準備をしに、部屋を出て行った。
体にいつものような重みはなかった。
自分もシャワーを浴びるために、部屋を後にする。
彼女は気がつかなかった。
今の今まで、そこに自分の知らない二つの視線があったことを。
彼女が部屋を出て行くと、その二つの視線は消えていった。
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