Prologue

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雫は死地をくぐり抜けてきた兄よりも、日に日に正気を失っていく母の方が気がかりだったがどうしたらいいのかわからなかった。 雫は悩むのを止めた。血が繋がってないわけではないが、結局「血縁」という名の他人なのだと。 実親の保険金で中高一貫・全寮制の私学に進み、家を離れることを選んだ。 養母は特に反対しなかった。 義兄とは去年倒れた養母の葬式以来、会っていない。精悍な顔つきのアスリート体型だった彼は、一目でわからないほど無節操に太り、色が病的に白かった。
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