紅の暴走

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「ユウマ。率直に聞こう」 「は、はい」 つい丁寧語で返事をしたところ、博士が噴き出した。 「・・・そう畏まらなくてもいい。私、いや、私たちの家族にならないかと、そう言ってるんだ」 「なんだ家族か・・・家族?」 家族と書いてファミリーと読むやつのことだよな?聞き間違いじゃなければそう聞こえたけど。 「ああ。私たちは孤児院をやっている。表向きはな」 ふふん、と胸を小さく貼って言う博士。 「お・も・て・む・き?表向き?」 「何故二回も言った?まぁいい。表向きと言ったからには裏もあるわけだ。他の裏事業からすればちっぽけなものだけどな」 ちっぽけなものだとは言うが、眼光を光らせてそう言うのだ、たぶん世界征服とかを考えているのだろう。 「それは・・・?」 一応聞いておくことにした。 「聞いて驚け!世界平和だ!」 「・・・あっ、ふーん」 つい生返事をしてしまった。アニメであれば俺の目からハイライトがおさらばしていたに違いない。 「ユウマお前信じてないな!?世界平和だぞ世界平和!」 「てっきり世界征服かと」 イーガルとか完全に戦闘系じゃないですかーやだー 「・・・今この世界で対話という手段は効かない。ネジ一本から宗教の対立まで、どんな理由付けで戦争が行われているかわからない」 ネジ一本で戦争とはな・・・この世界の住人は馬鹿なのだろうか。 もっとこう、俺が言うのもなんだが、マシな理由で戦争したらどうだろうか。 「挙句の果てには・・・北方では魔王軍の侵攻が始まっているというのに、それを討伐し、戦果を上げるのは何処かと戦争する始末だ。ユウマ、お前も見ただろう」 「・・・あぁ」 転生して最初の光景を思い出す。 全員が血眼になり、武器を同じ種であるヒトに向けて互いに命を奪い合おうとしていた。

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