眠りすぎ姫

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 私はこの国の姫。「ご趣味は?」と聞かれたら、迷うことなく、こう答えるようにしている。 「趣味は寝ることです」  私は何より寝ることが好き。誰もが呆れてしまうほどに、私は良く寝る。  あまりにも、私が寝ている時間が長いから、父に説教されたこともあった。説教をされると、反発する子がいるように、私の場合は説教されたら、された分だけ、寝ることに熱中した。  何せ働かなくていい。黙っていても、国民から税金が徴収される。国の政治など、男の仕事であり、王族の女としての仕事といえば、世間に笑顔と手を振るだけでよかった。こんな、楽な仕事が他にあるだろうか。だから、私は庶民の前に姿を見せる時以外は、いつも寝ているようにした。  私の躾係が起こそうとしたこともあった。  無駄だというのに。  何をしたって、本人に起きる気力がなければ、どれも無意味に終わってしまう。フライパンをうるさく叩こうとも、毛虫に似せた玩具を私の懐に忍ばせようと。  そこで、起きられるのは、ただの人間。私は筋金入りなので、決して起きることはなかった。  やがて、躾係の方が音を上げてしまい、私の部屋で倒れ、救護室まで運ばれた。本当に、静かにしてほしい。  私が、簡単に起きないことを知ると、父はますます躍起になって私を起こそうとした。
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