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「あー、もうっ!本っ当に最悪っ」
(―――よし、家を出よう)
たっぷり5秒考えた末に、イブは決断を下した。
思うが早いか、イブはクローゼットを開けると中から四角いリュックのようなものを取り出し、それを背負ってベランダへと躍り出る。さすがは資産家の家と言うべきか、今現在イブがいるベランダは落ちれば即死間違いナシというほどの高さだった。
(ここ、結構高いからちゃんと飛べるよね・・・?)
イブが柱に掴まりながら手すりに足をかけると、それを見計らったように今までより一段と強い風が吹いた。イブはそれをみとめると、背中に背負ったリュックについているヒモをおもいきり引っ張り、ベランダから飛び降りた。このまま落ちていくように思えたが、イブの背負ったリュックから左右に羽が現れ、イブは空へと舞い上がった。
「やった!うまくいった!!」
現在イブが背負っているものは、イブが両親に内緒で物づくりが得意な使用人につくってもらったものだ。
「さ~て、これからどこに行こうかな~」
これからのことに思いを巡らせるイブ。しかし、ことがそんなにうまくいくはずもなく・・・
「――うわっ、ちょっ!なんでいきなり強風なんかっ―――!!!」
イブはいきなりの前方からの強風にバランスを崩し、空を眼前に見ながら下へと真っ逆さまに落ちていく。
いきなりの強風は空の移動の経験者ならばどうにかなっただろうが、イブは知識も経験も無いズブの素人で、ここまでは人並み以上の運動神経でやってきただけである。
「あ―――もうっ!!本っ当に最悪―――――っっ!!!」
イブの悲痛な叫びが大空に響き渡った。
* * * * *
イブにとっては最悪の日でも、これから出会う少女にとっては人生で最高の日になるのだった。
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