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「「あい。」」
姐さんの合図と共に、子赤さんと姐さんが三味線を奏で、我儕が唄う。
三味線の優しい音色。
二人の気持ちが伝わってくる。
その気持ちに応えるように自分も唄う。
お座敷で旦那さんに楽しんで貰っている時は、嫌な事も何もかも忘れられる。
自分が性別を偽っている事さえも…。
曲が終わると。
「どないでした?」
「楽しんで頂きんしたでしょうか?」
少し不安になりながら先生に聞く。
すると、彼は嬉しそうに言った。
「凄く素敵でした。お二人とも、また一段とお上手になられて。良い曲に良い唄。
本当に素晴らしい。
それに、二人ともどんどん美しくなっていきますね。流石、花房付きの新造です。」
そう言われると素直に嬉しくなる。
「わぁ、ほんまどすか?嬉しわぁ。何や、センセに褒められると、姐さんに褒められてる気分になりますなぁ。
なぁ、蝶尾はん。」
「あぃ。ほんに、嬉しいでこざんすよ。」
嬉しそうにする我儕と小赤さんを眺めて、姐さんと椿先生もくすくすと笑っている。
「さて、次は何を見せて貰いましょうか?」
「そうどすなぁ。」
と、考えていたその時だった。
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