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今年最高気温をマークしようとしていた。うだる暑さから頭上に設置されたエアコンの冷風が少しは熱を下げたが、じっぱりと汗ばんだ背中。
汗が接着剤となり背中とぴったりとひっつく服を左手で離す。
トンネルを抜けると見慣れた景色だった。
電車が少し揺れカーブに差し掛かった時、林の木々によって景色は遮られた。
景色が奪われ四人席に座る彼女が車内に目を戻すと目の前のサラリーマン風の男性と目が合い、慌てて窓の外を見た。
まだ見慣れた彼女の故郷の景色は林の木々に遮られたままだった。
『次は南明日(なんみょう)。南明日。』
車掌のアナウンスと共に電車が減速する。
東京から久しぶりの里帰り、鞄をしっかり握り下車する心構えをした。
彼女の後ろの席の母の膝に座る男の子が突然「ねぇ、あれUFO?」と言ったのをきっかけに彼女も彼女の前に座る男も窓の外を見た。
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