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山は城を守る城壁のように南明日町をぐるりと囲んでいた。
盆地になった町からは朝の霜が多く農作物は厳しい環境下で耐え、そして甘みが凝縮したカブは町の特産となっている。
若年人口は減る一方、老年人口は増え続けている。
交通手段といえば、電車と市営バス、車。どれも隣町に行くにはトンネルを抜ける必要があり大変不便と町の人は口を揃えて言う。
午後十時二分南明日駅着の電車が、およそ三分遅れで発車したのは南明日町上空を降下中の黒い物体のせいだろう。
黒い物体は発見直後は立方体で金属らしいテカりがある。
それが落下中に直方体になり大きさが倍々になっていった。
長方形が突然長方形の薄い板になり、楕円になり、ツボ型に変形した。
さながら上空で金属加工が行われているようだ。
山の木々に留まる鳥達が何事かと一斉に羽ばたいた後
ツボ型の黒い物体はゆっくりと地上に着地。町の一部を覆った。
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