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駅から町の一部が黒い物体に覆われるのを始終見ていた人々は騒いでいた。
電話で興奮気味に状況を伝える者。
奇声を上げる者。
そんな中、宮崎美愛(みう)は顔面蒼白で立ち尽くしていた。
黒い物体が落下した地点、黒い物体が覆っている中に美愛の実家がある。
帰郷を楽しみにしていた……。
突然震える携帯電話。
美愛は電話にでた。
「お父さん!大丈夫なの!?」
声が震える。
「大丈夫だ。何ともない。」
少し胸を撫で下ろす。
「お母さんに、おばあちゃんは大丈夫?怪我とかない?」
「みんな大丈夫。美愛、今どこだ?」
「駅だけど……。」
「そこから逃げなさい!」
「嫌だよ!」
嫌な予感が美愛の頭をよぎる。
もし、町を覆う黒い物体が変形し、覆われた部分が押し潰すような事が起きたら……。
考えただけでも悍ましい。
「中は真っ暗だ。みう、み……」
突然電話が切れた。
「お父さん!」
美愛の目頭が熱くなる。
「お父さん!」
返事のない電話の向こう側に美愛は必死に叫んだ。
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