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あれは「緑人間」なのだと。
「じいちゃん、桜大、飯やで」
お母が呼びに来たので、桜大とおじぃは台所へ夕飯を食べに行った。
飯を終えて仏間へ戻ってきた時は、夜の畑に「緑人間」はいなかった。
緑したたる山々と森に、優しく抱かれるようにして黒沼村はあった。
春は、村中が桜色に、夏は、山に新緑に、村の田んぼは苗の緑に、秋は山々が燃えるような紅葉に、村は稲穂の黄金に、そして冬は、すべてが白く、白く染まる。
山と森を伝わって流れ出る、透き通った豊かな川が隅々まで潤し、季節折々の祭りや行事を川面に映してきた。
村の東にある大きな森。
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