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黒沼の森は、桜大の一番の遊び場所だった。
一人で森の中を歩き、花の香りを、緑の匂いを、梢を渡る風のささやきを身体中で感じる。
桜大は、そうして何時間でも過ごすことができた。
そんな時、桜大は、よく不思議なものを見聞きしたのだ。
それは、形がはっきりしていたりしていなかったり、音だけだったり、気配だけだったりさまざまで、しかし、まるで空気のように自然に、そこに在った。
桜大は、それも森の一部なのだろうと思っていた。
それは、今も変わらない。
小さい頃に比べれば、桜大が見聞きする不思議なものの数が減ったように思える。
それでも、神秘は変わらずに桜大な傍に在るのだ。
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