本塁

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                そして 部室は空っぽになった 一年振りに訪れた母校の 凸凹の目立つグランドで くりぬかれたホームベースの跡を 靴の裏でなぞり かつて背負った番号の ユニフォームをゴミ袋に詰めて そして 扉に鍵が掛けられた 柔らかな緑 混雑のよろこび 日射しに熱くなった白球を 追い越して 枯れ葉の中に見失う秋 真冬の痺れる手のひら 来年も いつまでも 引き継がれていくと思っていた そして ゴミ捨て場まで歩いて行く 肩に食い込む 傘の真っ直ぐな脊椎 要らないものは 抉り取ってしまおうね 使う人がいないのなら 丸めて棄てる他ないね、そうだろ そして 若葉の時代は終わってしまった 個性のないワイシャツの 湿っぽい執着とともに 僕の好きだったソフトボール部は 砂煙の向こうに廃れた
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