花籠

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                君がいなくなったって 間違いなく聞いたけれど 君がいなくなったことを 全く感じられなかった 周りの涙も 箱の中の動かない君も 君がいなくなったという 確信には繋がらなかった 喩えるなら 海をバケツに一杯掬ったように 喩えるなら 広い部屋の片隅に巣食ったように 微かに でも 確かに 嗚呼 君は花籠に 幾片かの虚しさを詰めて寄越した そんなものは要らないよ 何処に送り返せば良い? 時計を48時間巻き戻して あの日より少し 内側を歩いて 嗚呼 君は四角い花籠に 幾片かの虚しさを詰めて遺した 私の知らない誰かが 読み上げていた手紙の結び 「思い出をありがとう」だなんて そんな気持ちには 到底なれないんだよ
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