あたしはヒロインになんかなりたくない

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「君が死んだのは間違いだったんだよ」 にこ、と人懐っこい笑みを浮かべたカミサマがあたしにそう言った。 優しく、けれど厳かな声で。 「生き物は生きるべき時間を生き、死ぬべき時間に死ななきゃいけない。 そうしなきゃ因果の流れが狂うからね。 ──なのに。 君は死ぬべき時間を間違えちゃったんだ。 全うすべき生涯を途中でリタイアしちゃった。いや、この場合はさせられちゃったんだけど。 でもね、間違いは修正されなくちゃいけない。運命の輪は正しく廻らなくてはならない。 だから君には……、 もう一度、生まれ直して人生をやり直してもらわなきゃいけない」 厳かに、諭すように。 今度こそ、その生を全うせよ、と。 生まれてきて、七年。 何一つ成さず、何一つ返せないまま簡単に死んだ、馬鹿な子供にそう言った。
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