新月の夜を好む

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 新月の夜を俺は好む。  子供の頃は月は段々と再生し、満月で完璧になり、少しずつ削られ、やがて新月になったときに消滅してまた再生されるものだと思っていた。  だからこそ俺は恐ろしい闇を照らす満月よりも闇に滅せられた新月の晩が好なのだ。  今でもそうだ……。 新月という月が無くなった夜にこそ人々は原始の恐怖を思い出すのだと思う……そして俺はその新月の時にこそ本来の姿になるのだと思う。   バシュッ! という音共に男の首が胴から離れる。 一拍遅れた後の首から噴出する血液の音がたまらない。 「えっ?なんだ……これ……」  疑問を口にした別の男の顔を一閃すると上半分がズレて落ちていく。 軽そうな男の頭は実際にこれで半分位の重さになったわけだ。        顔を半分無くした男と完全になくした男はまだ未練がましく立ち尽くして、花火のように血を噴出し続けている。  何かイラっときたので二人とも身体をバラバラに切り裂いてやるとやっと軽くなった下半身が地面にバタリと倒れこんだ。  切り裂いた身体の残骸が鮮やかに空に飛んで一部は地面にドチャリと音を立てて、また一部は二人の友人であろう男達の頭上に落ちていった。 「イ、イ、イギャーーー!」  かん高い悲鳴を上げたヒゲ面の男の喉に新しく口を作ってやると悲鳴の代わりにブクブクと血泡を出してのた打ち回る。   このまま放って置いても死ぬだろうが、どうにも新しい口からでてくるヒューヒューという音がうるさいので、首の口を四角形に切り取ってやるとやっと音は消え、男もあっさりと死んでくれた……。  つまらない奴らだ。 無差別に絡むなんてのは自殺願望があるとしか思えないので願いどおりにしてやった。 本当に願ったかどうかは別だが……。 「だ、誰か……助けてくれ~!」  だらしなくズボンを下げた男が器用に走り去っていく。 ああもう一人いたのか、それにしてもあんな短くズボンを履いたら裾が汚れてしょうがないだろうに……実際に道端には犬の糞やらが落ちているのに気づかないのか? 真面目な俺には理解できない……、 「助け……ビギャワッ!」  新月の晩で調子が良いので十メートルほどで追いつく。 併走して男を観察してみたが、知能の欠片もないその表情は恐怖と混乱でグシャグシャになっており気持ち悪いことこの上ない。  なのですぐに併走を止めて上半身と下半身を分けてやった。
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